萌豚日記

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【シン・ゴジラ】初代ゴジラの庵野流リビルド!

去る8月24日に庵野秀明監督作、シン・ゴジラを見てまいりました。

これまでゴジラシリーズは初代しか見たことがなく、「早くエヴァ作ってくれ~」の思いもあり、公開から一月が経過していたのですが、Twitterでの評判がやたら良かったため劇場へ足を運びました。

 

鑑賞後「めちゃくちゃ面白い!」という思いと「自分の感想を書きだしておきたい!」という思いが芽生え、Twitterではその性質上映画を未見の方の目にも入ってしまうということで、すぐ目につかないチラシの裏的場所へ感想を書き殴ってしまおう、という経緯でこのブログを開設しました。

映画を劇場で見るのは年に数作程度ですが、今後も琴線に増える作品があればこちらに適当な駄文を垂れ流していこうかと思います。

 

さて、シン・ゴジラです(作中の展開などに触れるので未見の方はここでお引き返し下さい)。

 

鑑賞前の事前情報は知人からのインプレッションである「エヴァっぽい」、この一文のみでした。

予告映像すら全く見ずに劇場に突撃したわけですが……結果から言えばこれが功を奏しました。二度の衝撃を味わうことができたのです。

 

一度目の衝撃は、東京湾内に出現したゴジラが多摩川を遡上、蒲田に上陸し初めてその全容を観客に見せるシーン。

 

……きもちわるいのです、すごく。

 

ゴジラといえば初代しか見たことのない私にとっても、かの大怪獣のビジュアルは黒々とした肌のいかめしい竜が直立しているイメージ。おそらく日本国民の誰もが持っているであろうイメージです。

しかしご存知の通り、本作のゴジラはイグアナの胴体にラブカを接続したような図体で登場。黄色がかった肌に赤い体液をだらだら垂れ流すエラがあり、目はうつろ。二足歩行はするものの地を這うような不気味な前傾姿勢で、逃げ惑う群衆を追いかけます。

 

鑑賞後にざっと公式HPやPVを見たところ、この第二形態の存在は全く無し。秘匿されています。

ゴジラという存在のイメージが固定化されていることを逆手にとり、スクリーンの中の群衆と同じく「巨大不明生物が現れた恐怖、衝撃」を味わされたのです。

 

単にエヴァっぽく描いたゴジラではなく、リアルなパニックムービーとしてのゴジラ

これが庵野ゴジラ

 

と開始早々座席で一人衝撃を受けていました。

 

さて、肝心のゴジラは蒲田から都心部へと移動、その途上で進化(生物学的には変態?)し、さらにその後海中へと逃避。ゴジラの一連の行動の裏では甚大な被害をもたらすゴジラに対しどう対処するか、について政府高官たちが会議を行うのですが……ここで二度目の衝撃。

 

あれ、これ震災映画じゃね?

 

最初にこの映画のモチーフが3.11だと気づかされたのは金井内閣特命担当大臣が口にする「想定外」というセリフでした。このセリフは劇中何度も使用され、いやがおうにも5年前の悲劇が思い出されます。他にも防災服で会見を行う内閣総理大臣ゴジラの歩行ルートに一致して上昇している都内各地のモニタリングポスト、それを発見し色めきたつSNS。そして被災後すぐさま復旧し、何事も無かったかのような東京の経済活動や人々の暮らし……

全ての演出があの3.11直後の東京を思い起こさせます。当時私は東京にいましたが、劇場では正にデジャヴを見ているようでした。

そしてここに来て、初代ゴジラのテーマが想起されます。

原水爆の脅威。

では3.11をモチーフとしたシン・ゴジラのテーマは。

当然ながら、これは原発事故の脅威でしょう。

 

「もしゴジラが現代東京に現れたら」というパニックムービーに、福島第一原発事故を絡めてきた!というのが私にとっての第二の衝撃でした。

 

劇中では再度出現したゴジラ放射能流で東京中心部を焼き払う大暴れ。オーバーヒートで停止したゴジラの裏では凍結作戦が企画、遂行。犠牲を払いながらも作戦はなんとか成功を収めるのですが、このゴジラ=福島第一原発の想定は非常に徹底しており、

・「ゴジラを倒せ(原発止めろ)」の国会前デモ

・対処としての”凍結プラン”

・対ゴジラ最終決戦兵器(アメノハバキリ)は福島第一原発事故でも注水に用いられたコンクリートポンプ車

・凍結後も日本国がアンダーコントロールにおかねばならない

など、数多の類似点が挙げられます。

 

映画全編を通してみれば庵野監督お得意のミリタリー描写、特撮は圧巻。演出の節々に見られるエヴァっぽさにもニヤリ(BGMにはおなじみEM20、初代リスペクトか伊福部さん楽曲も多数。セリフ回しもエヴァっぽくて政府内部には一体何人の日向マコトみたいな喋りをする人間がいるんだ……!)。

政府閣僚や官僚との会議シーンも非常に「それっぽく」作られていてリアルだったのですが、何よりも原水爆の脅威を示した初代ゴジラのリビルドを、テーマを原発事故に代え敢行したことに感動を覚えました。

 

虚構の存在であるゴジラを通して、日常を破壊しかねない脅威が迫った時人々(政治家、官僚、自衛隊、公安、一般人などなど)はどう行動するのか、についてシン・ゴジラは精緻に描いています。やたらカッコよく、ではありますが。

 

一方で、原発の是非そのものに対する本作のメッセージは玉虫色で、見る者によって好きに解釈が可能でもあります。最後のシーンも思わせぶりなゴジラの尾のカットですしね。

個人的には、ラストで矢口副本部長と赤坂内閣官房長官代理の語った「スクラップアンドビルド」が本作で制作チームの述べたかったことだろう、と。

どうあっても今後進んでいくしかない、という庵野監督なりの現代日本に対する応援歌なのかな、と感じました。

 

まとめ

現実VS虚構の謳い文句の通り、ひたすらリアルに作り上げたパニック映画でありながら、原水爆の脅威をテーマにした初代ゴジラと同じくしっかりとしたメッセージ性を持たせていた良作だと思います(ちょっと「日本という国は~~」と誇らしげに評価するくだりでこっぱずかしくなるシーンもありましたが……)。
久々に邦画を見ましたが非常に楽しめました。庵野監督、エヴァも楽しみにしておりますよ?

 

<了>